白夜行(30)
『菊や』は入り口に白木の格子戸(こうしど)が入った小奇麗なうどん屋だった。紺色の暖簾(のれん)がかかっており、店名が白抜き文字で書かれている。わりと繁盛しているらしく、昼前から客が入り始め、午後一時を過ぎても、客足の途絶える気配がなかった。
一時半になって、店から少し離れたところに白のライトバンが止まった。ボディの横に『アゲハ商事』とゴシック体でペイントされている。
入口装了白木条门的菊屋是一家清爽整洁的乌龙面店。店门挂着深蓝色的布条,上面用白字写着店名。生意颇为兴隆,不到中午便有客人上门,过了一点,来客依然络绎不绝。
到了一点半,一辆白色小货车停在离店门稍远处。车身以粗黑体漆了“扬羽商事”的字样。
運転席から一人の男が降りてきた。灰色のジャンパーを羽織った、ずんぐりした体形の男だった。年齢は四十前後に見える。ジャンパーの下はワイシャツにネクタイという格好だった。男はやや急ぎ足で、『菊や』に入っていった。
「正確なもんやな。ほんまに一時半ちょうどに現れたで」腕時計を見ながら笹垣は感心していった。『菊や』の向かい側にある喫茶店の中である。ガラス越しに外を眺めることができる。
一个男子从驾驶座下车,他身穿灰色夹克,体型矮壮,年龄看去约四十岁。夹克里穿着白衬衫,打领带。他略显匆促地走进菊屋。
“消息果然没错,真的在一点半左右现身了。”笹垣看着手表,佩服地说。他在菊屋对面的咖啡馆,从那里可以透过玻璃眺望外面。
「ついでにいうたら、中で食べてるのは天麩羅(てんぶら)うどんですわ」こういったのは笹垣の斜め向かいに座っている金村刑事だった。笑うと、前歯の一本が欠けているのがよくわかる。
「天麩羅うどん? ほんまか」
「賭(か)けてもええです。何遍か、一緒に店に入って目撃しました。寺崎が注文するのは、いつも天麩羅うどんです」
“还有个附带消息,他正在里面吃天妇罗乌龙面。”说话的是坐在笹垣斜对面的刑警金村。他微笑着,清楚地露出嘴里缺了一颗门牙。
”天妇罗乌冬面?真的吗”
“可以和你赌哦。好几次一起进店看见的。他每次点的都是天妇罗乌冬面。”
「ふうん。よう飽きんこっちゃな」笹垣は『菊や』に目を戻す。うどんの話をしたせいで、空腹を覚えていた。
西本文代のアリバイは確認されていたが、彼女への疑いが完全に晴れたわけではなかった。桐原洋介が最後に会ったのが彼女だということが、捜査員たちの心に引っかかっていた。
彼女が桐原殺しに絡んでいたとすると、まず考えられるのは共犯者の存在である。未亡人の文代には若い情夫がいるのではないか――その推理に基づいて捜査を続けていた刑事たちの網にかかったのが寺崎忠夫(てらざき ただお)であった。
“哦,亏他吃不腻。”笹垣将视线转回菊屋。提到乌龙面让他饿了起来。
西本文代虽有不在场证明,但她的嫌疑并未完全排除。由于桐原洋介生前最后见到的是她,专案组始终对她存疑。
若她与桐原命案有关,首先想到的便是她必然有共犯。守寡的文代是否有年轻的情夫——警察们以此推论为出发点撒下调查网,网住了寺崎忠夫。
寺崎は化粧品や美容器具、シャンプー、洗剤などの卸売りで生計を立てていた。小売店に卸すだけでなく、客から直接注文も受け、自ら配達するということもしている。『アゲハ商事』という社名を掲げてはいるが、ほかに従業員はいなかった。
寺崎以批发贩卖化妆品、美容用品、洗发精与清洁剂等为业。不仅批发给零售店,也接受客人直接下单,并且亲自送货。公司虽叫扬羽商事,但并无其他员工。
刑事たちが寺崎に目をつけたきっかけは、西本文代の住む吉田ハイツ周辺で聞いた話だった。白いライトバンに乗ってきた男が文代の部屋に入るのを、近所の主婦が何度か目撃していた。ライトバンにはどこかの会社名が入っていたようだが、そこまではよく見ていないと主婦はいった。
刑事たちは吉田ハイツの近くで張り込みを続けた。
警察之所以会盯上寺崎,出于在西本文代住的吉田公寓附近打听出的闲话。附近的主妇几度目击驾驶白色小货车的男子进入文代的住所。一个主妇说,小货车上似乎写了公司名字,只是她并未仔细端详。
警察持续在吉田公寓附近监视。
この作品を聞いてくださった視聴者の皆様全てに、心よりの感謝を申し上げます。
由衷感谢收听我朗读的大家。
朗读:KIKI
作者:東野圭吾
译者:刘资君
编辑:笑kankan
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